ICTとは離れますが、水問題です。

 日経レストランONLINEに掲載された記事です。

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【食の未来は大丈夫か?】
http://nr.nikkeibp.co.jp/future/syoku_10/index.html
 『第10回 次に来るのは「水問題」』
文=田中 栄、馬渡 晃


◎農作物輸入は「水」を輸入すること

 日本だけでなく、いま世界中で食料問題が話題になってきている。6月には国際連合食糧農業機関(FAO)が、サルコジ・フランス大統領など世界のトップを招いて、ローマで「世界食料安全保障」という会合を開くほどだ。

 だが、食料問題は、もう一つの大きな問題の前触れに過ぎないかもしれない。それが「水問題」である。

 現在、地球に存在する水のほとんどは海水である。淡水は全体の2.5%に過ぎない。しかもここで言う淡水には南極の氷なども含まれており、人間が実際に使用できる水は、水全体のわずか0.008%。約10億km3だ。

 ただし量だけで言えば、世界の人々の必要量を賄うには十分である。問題はそれが地域的に偏って存在していることだ。実際、世界各地で水を巡る紛争や水危機が起こっている。

 例えば、北米の五大湖では、灌がいなどの大量取水で水位が下がっているし、アジアの大河、メコン川流域では、中国、ミャンマーラオス、タイ、カンボジアなどが水利権を争っている。水が乏しい地域だけではなく、水が豊かと言われた地域にも問題が広がっているわけだ。


◎広がる水危機、水紛争

 国連は現時点でも世界中の5人に1人(12億人)が安全な飲料水を手にできず、5人に2人(24億人)が下水などの基本的な衛生施設を欠き、これを解決するには1800億ドルもの巨費が必要であると報告している。また地球温暖化などの進行で、2025年には、推定世界人口75億人の半分が水不足に直面するという予測もある。

 全世界で使われる水のうち、およそ3分の1は農業用水である。水の需要は年々増加の傾向にあり、過剰なくみ上げによる地下水の枯渇や灌がい用水の不足によって、穀物生産にも深刻な影響が出始めている。世界有数の穀倉地帯である中国北部や米国の一部でも、すでに地下水が枯渇したところが出始めている。黄河流域では、上流から流れてきた水が海までたどり着かない「断流」が頻繁に起こるようになった。

 中でも新興国の場合、近代化の影響で工業用水や生活用水の需要が高まる結果、農業用水の不足に拍車が掛かるという現象が起きている。各地で水問題に悩まされている中国はその一つ。特に深刻なのは首都・北京だ。

 北京が位置する黄河下流域は、年間降雨量が700mm前後と、もともと降水量が少ない地域である。そこに急激な工業化と人口増加によって、水需要が“爆発的”に増加し、地下水の水位は毎年60cmづつ下がり続けている状態だ。大型ダムを作って必死に水を集めているが、それによって今度は周辺地域で農業用水が足りなくなる、というジレンマが続いている。水不足は今後インド、西アジアなど世界各地に広がる見通しだ。

 中国における水事情の悪化は、日本にとっても決して他人事ではない。なぜなら中国から食料を輸入するということは、中国の水を輸入しているのと同じだからである。


◎1kgの牛肉に20tの水

 食料の生産には大量の水が必要だ。実際の水ではないが、食料の中に潜んでいる水という意味で「バーチャルウオーター」(仮想水)と呼ばれている。

 バーチャルウオーターは、食料の種類によって違ってくる。例えば、小麦は1kgを生産するために1tの水が必要と言われる。大豆の場合は、1kg あたり2.5t。そしてそれらの穀物を飼料とする牛肉の場合は、1kgを生産するために、なんと約20tもの水を使っているという。

                                                                                                    • -


 仮に日本が食料の自給率を上げるために、日本沿岸の各所に淡水化プラントを設置した場合に考えられる問題点は。

 ▼ 局所的な海水の塩分濃度の変化により、周辺生態系に影響を及ぼす可能性。

 ▼ 日本全国規模のプラント稼働による広域の塩分濃度の変化は、日本近海の海流に影響を与え地球規模での気候に影響を及ぼす可能性。

 これらが考えられると思います。
 一筋縄ではいかない問題ですね。

 日経レストランONLINEに掲載された記事です。

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【食の未来は大丈夫か?】
http://nr.nikkeibp.co.jp/future/syoku_10/index.html
 『第10回 次に来るのは「水問題」』
文=田中 栄、馬渡 晃


◎農作物輸入は「水」を輸入すること

 日本だけでなく、いま世界中で食料問題が話題になってきている。6月には国際連合食糧農業機関(FAO)が、サルコジ・フランス大統領など世界のトップを招いて、ローマで「世界食料安全保障」という会合を開くほどだ。

 だが、食料問題は、もう一つの大きな問題の前触れに過ぎないかもしれない。それが「水問題」である。

 現在、地球に存在する水のほとんどは海水である。淡水は全体の2.5%に過ぎない。しかもここで言う淡水には南極の氷なども含まれており、人間が実際に使用できる水は、水全体のわずか0.008%。約10億km3だ。

 ただし量だけで言えば、世界の人々の必要量を賄うには十分である。問題はそれが地域的に偏って存在していることだ。実際、世界各地で水を巡る紛争や水危機が起こっている。

 例えば、北米の五大湖では、灌がいなどの大量取水で水位が下がっているし、アジアの大河、メコン川流域では、中国、ミャンマーラオス、タイ、カンボジアなどが水利権を争っている。水が乏しい地域だけではなく、水が豊かと言われた地域にも問題が広がっているわけだ。


◎広がる水危機、水紛争

 国連は現時点でも世界中の5人に1人(12億人)が安全な飲料水を手にできず、5人に2人(24億人)が下水などの基本的な衛生施設を欠き、これを解決するには1800億ドルもの巨費が必要であると報告している。また地球温暖化などの進行で、2025年には、推定世界人口75億人の半分が水不足に直面するという予測もある。

 全世界で使われる水のうち、およそ3分の1は農業用水である。水の需要は年々増加の傾向にあり、過剰なくみ上げによる地下水の枯渇や灌がい用水の不足によって、穀物生産にも深刻な影響が出始めている。世界有数の穀倉地帯である中国北部や米国の一部でも、すでに地下水が枯渇したところが出始めている。黄河流域では、上流から流れてきた水が海までたどり着かない「断流」が頻繁に起こるようになった。

 中でも新興国の場合、近代化の影響で工業用水や生活用水の需要が高まる結果、農業用水の不足に拍車が掛かるという現象が起きている。各地で水問題に悩まされている中国はその一つ。特に深刻なのは首都・北京だ。

 北京が位置する黄河下流域は、年間降雨量が700mm前後と、もともと降水量が少ない地域である。そこに急激な工業化と人口増加によって、水需要が“爆発的”に増加し、地下水の水位は毎年60cmづつ下がり続けている状態だ。大型ダムを作って必死に水を集めているが、それによって今度は周辺地域で農業用水が足りなくなる、というジレンマが続いている。水不足は今後インド、西アジアなど世界各地に広がる見通しだ。

 中国における水事情の悪化は、日本にとっても決して他人事ではない。なぜなら中国から食料を輸入するということは、中国の水を輸入しているのと同じだからである。


◎1kgの牛肉に20tの水

 食料の生産には大量の水が必要だ。実際の水ではないが、食料の中に潜んでいる水という意味で「バーチャルウオーター」(仮想水)と呼ばれている。

 バーチャルウオーターは、食料の種類によって違ってくる。例えば、小麦は1kgを生産するために1tの水が必要と言われる。大豆の場合は、1kg あたり2.5t。そしてそれらの穀物を飼料とする牛肉の場合は、1kgを生産するために、なんと約20tもの水を使っているという。

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 仮に日本が食料の自給率を上げるために、日本沿岸の各所に淡水化プラントを設置した場合に考えられる問題点は。

 ▼ 局所的な海水の塩分濃度の変化により、周辺生態系に影響を及ぼす可能性。

 ▼ 日本全国規模のプラント稼働による広域の塩分濃度の変化は、日本近海の海流に影響を与え地球規模での気候に影響を及ぼす可能性。

 これらが考えられると思います。
 一筋縄ではいかない問題ですね。