都市化した人達 【脳化社会】

 出る釘は打たれる。

 人間は安定を求める、誰だって安定した生活がおくりたい。それは個人は勿論、家族、国家にも言える事だろう。安定が永く続くと組織は変化を拒み、硬直化する。こらはある意味でや止もうえない。
 これが都市化だ。都市の人間は、自分達がコントロール出来る人工物だけで自分達を囲い込む。城壁都市を作るのだが、しかし、それは自分達を檻の中に閉じ込める事でもある。自分ではそれに気付かない。

 だが城壁の外は絶えず変化している。その変化は長い時間を掛けて城壁を侵食する。侵食された城壁は時々現れる外の急激な変化に耐えらず崩壊する。その時になって中の人間たちは狼狽し慌てふためく、パニックを起こすのだ。

 しかし、たまに城壁の上によじ登り、周りの世界を見ようとする人間が現れる。彼は城壁の侵食気付き、同時に未知数の危険を孕む物の、広い世界があることを知り、外の世界に何とも言えぬ憧れを持つ。その事を彼は他者に話して聞かせるが、殆どの人間はそれを信じない、それどころか危険人物として扱う。彼は出る釘として、打たれる事となる。彼を打ち拉いだ人間達は壁の崩壊によって、彼が正しいと知るが後の祭りだ。

 下手なSF映画のストーリーのようだが、現実社会でしばしば起こる事だ。打たれる者はそれが悔しい、どうして早く気付いてくれないかと涙を流す。都市の壁は厚く堅固に見えるが意外に脆い、その事に早く気付くべきだ。


参考:養老猛司氏「唯脳論